一般社団法人 日本原子力学会 Atomic Energy Society of Japan

会員専用サイト

会長挨拶

2023年度 第45代会長

東北大学 新堀 雄一(にいぼり ゆういち)

 

 

 本会の責務は、設立趣旨にご賛同頂いた会員の皆様に、学会誌、年会・大会、報告書やセミナー・講習会、さらにはメーリングリストにより配信するニュース等を通じて関連する情報を着実にお届けすること、また、様々な組織等に属する多様な意見を持つ会員が自らの意見を一定のルールの中で発信し、会員同士が互いに刺激し合い、各自の専門知やその基盤を高め、さらに総合知として育む場を提供させて頂くことが第一にあると考えております。ここで、意見の発信とは、研究発表や論文投稿のみならず、部会、支部、専門委員会での活動、理事会や常置委員会における議論、さらには分科会や専門部会を含む標準策定の議論や福島第一原子力発電所廃炉検討委員会(以下、廃炉検討委員会)、福島特別プロジェクト、各種の連絡会等においての多面的な議論を経たものを含んでおります。それらを以って、最新の原子力に関する知見を継続的に社会にお示しすることになります。無論、ここで最新の知見とは単に技術だけではなく、社会科学的な知見をも含みます。これらを基本として本会を更に発展させたいと考えております。

 さて、ご承知の通り、昨今の国際情勢や環境問題を背景にしたGX実現に向けた議論は、皆様のお蔭を持ちまして、原子力の利用において大きな追い風になり、いわゆる次世代革新炉、その中で革新軽水炉についての議論も一層盛んになっております。他方、原子力の利用でやはり重要なことは、着実な軽水炉の再稼働だと強く思っております。原子力利用の大前提は、福島の復興と原子力発電の安全性の維持・向上であり、原子燃料サイクルの早期実現、円滑な廃止措置や廃棄物の管理・処分と併せ、これらを着実に進めていくことが重要でございます。また、エネルギーのみならず、放射線の高度利用についても、いわゆる社会におけるWell-beingへの志向に調和し、その更なる進展が切望されております。このような情勢に鑑み、今期、重点を置く取り組みとして以下に3つ挙げさせていただきます。

 まず、第一に福島第一原子力発電所の事故を防ぎ得なかったことに立脚し、廃炉検討委員会を中心にした学術的提言の発信、福島特別プロジェクトによる地元の方々の関心・ニーズに応える活動、本会が幹事を務める「福島復興・廃炉推進に貢献する学協会連絡会」からの協力・連携活動の発信と当連絡会の体制の拡大、さらに、「事故調提言フォローを基盤とした未来の日本原子力学会の活動への提言」の具現化に向けた取り組みを、今後も継続的に進めて参ります。

 第二に、会員の持つ専門知やその基盤に根ざした最新知見を如何にして多様な考え方を持つ人々からなる社会に伝えるかについて、ダイバーシティ&インクルージョン推進の取り組みや新たに導入した会友制度の活用とともに、情報発信検討小委員会において議論を重ねること、また、昨年度に広報情報委員会において整備されたポジションステートメントの発出を具体化することをも進めて参ります。

 そして、第三に、未来に向けた本会の在り方について、未来像検討ワーキンググループ報告書を基盤として、若手連絡会や学生連絡会と理事会との連携を進め、また、トランスディシプリナリー研究(超学際的研究/学際共創研究)、すなわち、複数分野の融合による学際的な特徴に加えて、研究者・産業界・行政・市民団体等が連携して社会の課題を解決する研究に向けた議論を深めたいと考えております。

 原子力を取り巻く環境が大きく変わりつつある現状においてこそ、日本原子力学会の役割は一層大きくなっております。前述を含む本会の様々な活動を継続、発展させ、併せて国際交流や日本学術会議、他学協会との連携を進めるとともに、それらの基盤となる財務についても、予算の収支均衡を目指した本会の安定した運営に努めてまいります。今後ともご支援とご協力を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。


2023年度副会長

大井川 宏之  日本原子力研究開発機構
佐藤 拓    原子力エネルギー協議会
越塚 誠一   東京大学