一般社団法人 日本原子力学会 Atomic Energy Society of Japan

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会長挨拶

2020年度 第42代会長

京都大学 中島 健(なかじま・けん)

原子力の信頼回復と未来に向けて

2020年度(第42代)の会長に就任いたしました中島健です。昨年、創立60年を迎えた本会は、その後の10年を「原子力の信頼回復と新たな未来を切り拓く『再構築期』」と位置づけ、活動を行っています。新型コロナウイルスの影響により、本会の活動の在り方も見直しが必要とは思いますが、実施すべき活動内容は、基本的に変わるものではありません。以下に、今期の主な活動計画を紹介致します。

1. 事故炉の廃炉と福島復興
事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉作業の実施と周辺地域の復興を進めることが重要であり、本会として、専門的・技術的な立場から、これを全面的に支援していきます。特に、来年3月には事故発生から10年という一つの節目を迎え、廃炉では燃料デブリの取り出しに着手することとなります。本会が実施している福島特別プロジェクトや廃炉委員会の活動、さらには、36学協会が参加している福島復興・廃炉推進に貢献する学協会連絡会を通して、技術的な支援や的確な情報の発信、提言を行っていきます。
また、来年3月には、東電福島事故から10年間にわたる事故後の取り組みの総括を行うとともに、今後の展望について考えるシンポジウムを開催する予定です。

2. 情報発信と理解活動
新型コロナウイルスへの対応にみられるとおり、訳の分からないものに対しては、そのリスクをゼロにしようとする動きが頻繁にみられます。しかし、どのような事象でもリスクをゼロにすることはできません。技術を利用する場合でも、それに伴うリスクは必ずあり、その技術を導入することによるメリットとの比較を行ったり、あるいは他の技術とのリスクを比較したりすることにより、技術の選択をしています。これは、放射線利用を含む原子力という技術においても同じことなのですが、原発事故を経験した後では、どうしても技術の負の側面が強調されているように思います。原子力技術のメリット・デメリットの両面を正しく理解してもらい、原子力技術が選択肢の一つとして、適切に評価されるよう、原子力に関する専門家集団として、タイムリーで正しい情報の発信に努めていきます。このために、部会活動や各種専門委員会活動の成果の積極的な公開やシンポジウム等の開催を進めていきます。また、現在、改修中の本会ホームページを活用した会員向け及び非会員向けの情報発信も行っていきます。これらの活動を通して、特に若い世代の方々に、原子力技術の持つ可能性と有用性を認識してもらいたいと思います。

3. 安全な原子力技術の開発と人材育成
エネルギーとしての原子力利用についての将来は不透明な現状ではありますが、第5次エネルギー基本計画では、2050年においても原子力は有力な選択肢の一つとして位置付けられています。また地球環境問題の観点からも、現状の化石燃料に依存した構造は早急に変える必要があります。一方、エネルギー利用以外の分野では、多方面で原子力技術が利用されており、特に近年は医療分野で利用が目立ちます。本会では、専門分野の研究者からなる部会や専門研究委員会の活動を通して、社会に役立つ安全な原子力技術のための研究・開発に貢献していきます。また、原子力技術を支えていく人材の育成が重要となりますが、人材育成を担っている大学における原子力の研究教育体制が脆弱化しつつあり、人材育成が難しくなってきています。特に、実験・実習等を行う研究施設等の廃止が進められ、今後の技術基盤の維持が困難な状況です。本会は、原子力アゴラ調査専門委員会の下、研究用原子炉や核燃料・RI施設の運営の現状、規制の動向などを調査し、報告書を取りまとめてきました。今後もこの活動を継続し、今後の人材育成に向けた提言の発信等を行い、技術基盤の維持、さらには発展に貢献していきます。

4. 会員獲得と経営改善
本会の会員数は、毎年100名程度減少していましたが、この2年間は200名近い減少となっています。賛助会員数も減少傾向にあり、財務状況も厳しくなっています。このために、効率化による支出の削減を図るとともに、会員サービスの向上やダイバーシティ推進活動をとおした、新規会員・賛助会員の入会促進などの活動を継続していきます。
最後になりますが、これらの活動は会員の皆さんの主体的な参加があって成り立つものです。ぜひとも、皆様の積極的なご参加をお願い致します。


2020年度副会長

中山 真一  日本原子力研究開発機構
藤澤 義隆  中部電力
山口  彰  東京大学