一般社団法人 日本原子力学会 Atomic Energy Society of Japan

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会長挨拶

2025年度 第47代会長

東京大学 越塚 誠一(こしづか せいいち)



2025年2月に第7次エネルギー基本計画が閣議決定され、我が国の原子力エネルギーは、国民からの信頼確保に努め安全性の確保を大前提に必要な規模を持続的に活用していくとの方針が示されました。そして、既設炉の最大限活用だけでなく、次世代炉の開発・設置に取り組むとされました。原子力エネルギーを持続的に活用していくには新しい炉の建設が必要です。次世代炉には安全性のさらなる向上を目指すことが求められており、それは当然ながら1F事故の反省を踏まえたものでなければなりません。さらには、安全マネジメント体制や自主的かつ継続的な安全性向上を目指す組織文化の醸成についても取り組む必要があります。日本原子力学会は全力をあげて1F事故調査を行ってその教訓を自らの反省とともに記しているだけでなく、教訓の反映状況に関するフォローも実施してきました。1F廃炉に関する様々な問題の調査および福島復興の活動にも精力的に取り組んでおります。日本原子力学会は1F事故の教訓を踏まえながら、原子力エネルギーの持続的な活用を学術・技術の面から支える役割を果たさなければなりません。

 このような情勢の中で、会員の皆様とともに日本原子力学会の活動をさらに活発にしていきたいと考えております。重点項目については、昨年度と同じく「伝える」「つながる」「はぐくむ」を継続したいと思います。

 第1の「伝える」は情報発信です。社会への発信に関しては、原子力および放射線に関する専門家集団である学会として、声明・プレスリリース・記者会見・ポジションステートメントに加えて、You TubeXでの発信も行っていきます。また、学会誌による最新のニュースやトピックス、論文誌ではアーカイブ化された先端的な論文、および専門委員会の出版物は、学会の本来の重要な情報発信です。さらには、標準委員会で審議され制定されている多くの学会標準は価値ある情報発信です。

 第2の「つながる」は学会内外の連携です。1F廃炉と福島復興の活動は、学会内外との連携を取りつつ継続して進めていく責務があります。専門家の間の交流である年会や大会、支部・部会・連絡会・専門委員会の活動は、研究や技術開発を活性化していくためには必須の学会活動です。日本学術会議において開催されている原子力総合シンポジウムは学会外との連携活動です。国際会議の開催など、国際的な連携も重要です。会員に加わっていただく準備として、会費がかからずに本会の連絡が届く会友制度については、さらにつながりを広げていくことを目指しています。

 第3の「はぐくむ」は人材育成です。教育委員会においては、高等教育における原子力施設見学会、初等・中等教育における教科書調査、技術者教育におけるCPDや技術士講習会が行われています。各支部ではオープンスクール、シニアネットワークでは学生との対話、若手連絡会の勉強会、学生連絡会のポスターセッションも継続的に実施されています。表彰についても人材育成の要素が多分にあります。小・中・高等学校の先生方を対象とした教育会員制度も運用しています。人材育成は原子力エネルギーを持続的に活用していくための基盤であり、学会の役割は大きいと考えています。特に、1F事故の教訓を人材育成の中にいかに組み込んでいくかが課題であると思います。

 学会活動は会員皆様の活動の集約であり、学会運営にあたっては会員の皆様のご意見が反映されるように心がけなければなりません。また、事務局の方々の熱心なサポートがあってこそ円滑な運営ができますので、事務局との協力は不可欠です。健全な財務を維持することも必要です。1年間、どうぞよろしくお願いいたします。


2025年度副会長

小崎 完    北海道大学
辻本 和文   日本原子力研究開発機構
吉岡 研一   東芝エネルギーシステムズ