会長挨拶
2022年度 第44代会長
日立GEニュークリア・エナジー 川村 愼一(かわむら しんいち)
社会の持続的発展のために、原子力と放射線の安全な利用には重要な役割が期待されます。原子力はカーボン・ニュートラルやエネルギー・セキュリティに貢献する実証された技術として、日本を含む国際社会で一定の役割を果たしてきましたが、他の学術・技術分野とも連携してさらに発展させることが求められます。また、医療や農業をはじめ、様々な分野で放射線利用が国民生活を支えています。もちろん、こうした利用は公衆の安全と環境の保全が大前提です。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉と、周辺地域の復興の推進に貢献していきます。また、事故の教訓を踏まえて安全性を高めるとともに、新たな課題にも真摯に向き合い、社会との対話に基づく活動、社会の利益のための活動、従来の原子力関係者の枠にとらわれない活動を展開し、未来に向けた取り組みを進めていきます。
こうした取り組みに共通して重要な事項として、力を入れていくことを四点あげさせていただきます。
一点目は、福島第一事故の教訓を踏まえ、未来への取り組みを進めることです。事故10年目に本会は学会事故調査委員会提言の実行度を調査し、社会や他分野との対話と交流、安全研究の推進や新知見の提供、自由な議論の場をもつこと、原子力人材の育成・教育、エネルギー基本計画への提案、社会への提言と情報の発信、福島第一廃炉と復興支援などに、引き続き取り組むこととしました。これを踏まえて本会では、未来に向けた活動を検討して提言に纏めました。また、全部会、若手連絡会、学生連絡会から推薦された若手会員に理事会が依頼し、原子力の魅力を高めるための課題とその解決のための提言も纏められました。これらをもとに、未来への取り組みを進めていきます。
二点目は、専門知に基づく情報発信、ならびに対話と交流の活性化です。原子力が関係する課題には、従来からの枠組みでは十分に検討できない事項もあり、課題に応じて他学協会、国内外機関、市民の方々とともに考えるなど、柔軟な取り組みが必要です。本会は福島関係の活動や連絡会の活動等で、そうした経験を積んできました。本年度開始した会友制度には3000名以上の方々に登録いただいており、社会との新たな接点ができてきています。自ら発信して対話と交流を進めることが、社会への貢献と新たな知を作る力になることに期待して取り組んでいきます。
三点目は、多様性を尊重し、より多くの人が参加して成長できる場にしていくことです。社会の持続的発展に向けて新たな課題に取り組むうえでは、柔軟な発想での価値創造が求められます。そのためには、性別、年齢、人種、宗教などに関わりなく、多様な方々が互いに尊重し合って参加し、成長する場を充実させることが不可欠であり、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを進めていきます。
四点目は、健全な財務基盤の維持です。オンライン会議活用等、効率化による費用削減も進めていますが、会費収入の減少に歯止めをかける必要があります。原子力と放射線による社会貢献を未来に向けて発展させるとともに、関係するコミュニティの裾野を広げ、その中で本会の会員であることの魅力を増す取り組みが重要と考えます。
本会が社会に貢献し、社会にとってそして皆さま一人ひとりにとって魅力ある学会であるために、真摯に取り組んで参ります。皆さまのご支援とご協力をお願いいたします。
2022年度副会長
新堀 雄一 東北大学
岩城 智香子 東芝エネルギーシステムズ
大井川 宏之 日本原子力研究開発機構