一般社団法人 日本原子力学会 Atomic Energy Society of Japan

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会長挨拶

2021年度 第43代会長

東京大学 山口 彰(やまぐち あきら)

 経済社会の持続的な発展とカーボンニュートラル社会の実現というチャレンジングな目標を達成するために、原子力エネルギーは大きな役割を果たさなければなりません。しかしながら、原子力を取り巻く環境は容易ならざる状況にあると認識しております。原子力技術の価値と現状をしっかりとお伝えする私たちの活動が不十分だったのではないでしょうか。原子力はエネルギー生産のためだけの技術ではありません。医療・診断、がん治療や農業など、国民生活の豊かさの実現になくてはならない放射線を利用する技術でもあるのです。同時に、福島第一原子力発電所事故がもたらした深刻な事態の経験、教訓を疎かにしてはなりません。日本にとって大切な原子力という科学技術を国民、社会に理解していただきしっかりと定着させること、それを支える役割を持つ日本原子力学会が持続的に発展すること、会員のみなさまに誇りと自信を持って活動していただくこと、これを実現させなければならないと考えます。
 日本原子力学会は、2019年に創立60周年シンポジウムを開催しました。日本原子力学会の今後の在り方として、『原子力の信頼回復と新たな未来を切り拓く「再構築期」を目指す』を提示しました。20213月には、福島第一原子力発電所事故から10年目、学会事故調査委員会の提言フォローを行うと共にシンポジウムを開催しました。そこで、学会として取り組むべき課題として、社会や他分野との対話と交流、安全研究の推進や新知見の提供、自由な議論の場をもつこと、原子力人材の育成・教育、エネルギー基本計画への提案、社会への提言・情報の発信、福島第一廃炉と復興支援、などを整理いたしました。要すれば、原子力の未来のすがたを再構築するとともに、さまざまな関係者と自由な意見交換を持ち、重要かつ本質的なメッセージを社会に積極的に発信する、こういう活動が求められていると理解しております。
 このような考え方のもとに、今期に重点的に取り組む具体的な活動として、以下の三点をあげさせていただきます。
 学会というところは、専門知を育む学術の場であると同時に、専門知を社会にお伝えして相互理解を深める交流の場でもあると考えます。学術については、19の部会や各種の専門委員会などの活動に支えられ、年会大会や学術シンポジウムなどの活発な取り組みがなされています。一方で、交流の場を活性化させる枠組みをつくりあげることなしには、原子力の価値を社会にお伝えすることはできません。
 第二に、学会の持続的発展のためには、会員の減少に歯止めをかけなければなりません。現在、毎年100人から200人ほどの会員数減少が続いています。この減少傾向にブレーキをかけるためには、あらゆることを実施すべきと思います。原子力のイノベーション、放射性同位元素による医療診断やがん治療など、こういった原子力の魅力を若い世代や原子力学会の外部に伝えること、原子力の安全性や放射線の知識などをわかりやすく説明することが求められます。学会は専門家のコミュニティであるという発想から、エネルギーや原子力の問題に関心があり、それを考える方々との出会いと意思疎通の場でもあるという発想に転換する必要があります。そうして、学会員の裾野を広げていくことが会員数の増加に不可欠ではないかと考えます。様々なセミナーやイベントを通じて多くの方々を惹きつけることが学会のオープンネスではないでしょうか。
 最後にコロナ禍での学会活動のあり方です。この1年間、困難な環境の中でどのように学会活動を行うかを模索し続けました。これからは、コロナ禍でこそ、効果的な学会活動のあり方を提案することが重要と考えます。オンラインだからこそ、ちょっと覗いてみて参加いただけるイベント、原子力についての素朴な疑問を気楽に質問できる仕組み、インターネットを活用して好きな時に視聴できる発信。このようなイベントに参加した方々は、原子力への理解を深め、それぞれの立場で発信をしていただけるでしょう。こうして、対話のチャンネルが広がることを期待します。
 原子力は将来にわたっても魅力ある技術であり続けるはずです。原子力を、専門家だけの世界に閉じ込めておくのではなく、広く社会に参加を呼びかけるための取り組みがここに述べた三点です。それが原子力の未来のすがたの再構築であり、日本原子力学会の持続的な発展につながるものと確信し、日本原子力学会の第43代会長として、原子力技術の魅力と価値をお伝えするとともに、提言フォローで指摘した課題に真摯に取り組むために尽くす所存です。どうぞよろしくご支援をお願いいたします。


2021年度副会長

中山 真一  日本原子力研究開発機構
川村 愼一  日立GEニュークリア・エナジー
新堀 雄一  東北大学