【意見公告】147. “原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的リスク評価に関する実施基準(レベル1PRA編):2013”及び“原子力発電所の停止状態を対象とした確率的リスク評価に関する実施基準(レベル1PRA 編):2019”の廃止
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<廃止予定の標準>
・原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的リスク評価に関する実施基準(レベル1PRA編):2013
・原子力発電所の停止状態を対象とした確率的リスク評価に関する実施基準(レベル1PRA編):2019
<概要>
・原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的リスク評価に関する実施基準(レベル1PRA編):2013
原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的リスク評価に関する実施基準(レベル1PRA編):2013は,日本原子力学会が標準委員会リスク専門部会の下にレベル1PRA分科会を設けて検討し,リスク専門部会及び標準委員会での審議を経て策定・発行したものです。この標準は,原子力発電所の出力運転状態における内的事象に関するリスクを総合的に評価することを目的に実施する確率論的リスク評価(PRA)のうち,炉心損傷の発生頻度までを評価するレベル1のPRAを実施する場合の要件及びそれを満たす具体的な方法を実施基準として規定したものです。
原子力発電所のPRAは,確率論を用いてそのリスクを総合的かつ定量的に評価する手法であり,炉心又は燃料の損傷に係る事象に着目して,損傷に至る事故シナリオ及び損傷後の事故進展を定量化することによって,発生頻度と影響を推定することができます。PRAの特徴は,原子力発電所のリスクにかかわる評価を現実的な仮定の基に論理的かつ包括的に行うことができること,リスクに影響を与える要因について定量的な考察が可能であること,及び原子力発電所やその構成設備に関する特性ならびに現象論に関する知識・データの不確実さとそれらによりもたらされる評価結果の不確実さを明示することができることなどにあります。
PRAについては,1975年に米国で公表された“原子炉安全研究(WASH-1400)”を出発点として,各国で技術開発,事例適用,及び応用研究が進められてきた結果,今日では,PRAは安全規制を含む安全設計・運転管理等の広い分野における意思決定プロセスを支援する効果的な手段と認識されています。
また,2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故は,津波によって建屋内部に浸水するなどの影響によって,複数の安全上重要な設備が機能喪失してしまった事故ですが,このような安全上重要な設備の共通原因故障が炉心や格納容器などに及ぼす影響を分析する手段としても,PRAは非常に有用な技術です。
我が国におけるPRAの適用例としては,アクシデントマネジメント策の有効性検討及び定期安全レビューにおける原子力発電所の定量的安全評価がありますし,規制当局においては,2012年に新設された原子力規制委員会において,新しい安全規制の中でPRAを積極的に活用していくことが検討されています。
このように,PRAの有効性が認識され,その活用が進んでくるにつれて,PRAに関する品質及び透明性の確保がより重要な課題となってきています。これらの資質を確保するためには標準的な評価手順を提示することが有効な手段であると考えられるため,標準委員会では,その活動の一環として原子力施設のPRAの実施に関する標準の整備を行っています。
原子力発電所を対象とするPRAにおいては,一般的に,運転状態については,出力運転時と停止時を区別してPRAを分類し,想定すべき事象については,事故の発端となる事象の特性に応じて,発電システムの内部で起きる機器故障及び人的過誤などの内的事象に起因するPRA並びに地震,津波などの外的事象に起因するPRAに大別されます。またこれを評価する指標の範囲は,炉心損傷頻度までを評価するレベル1PRA,レベル1PRAの結果を受けて格納容器破損頻度及び放射性物質の環境への放出量やタイミングなど(ソースターム)を評価するレベル2PRA,さらに,ソースタームをもとに公衆や環境への影響の頻度と大きさ(リスク)を評価するレベル3PRAに分類されます。
このように評価範囲が多岐に渡ることから,当学会におけるPRA標準の整備は国内での活用のニーズ,PRA技術の整備状況などを考慮して,段階的に進められています。
本標準は,“原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル1PSA編):2008”が発行後5年を経過したことから改定するものであり,改定に当たっては,最新知見を踏まえたPRA技術の向上を反映させるとともに,品質や透明性の確保がより適切に行われるよう,要求事項の見直しを行いました。
さらに, PRAの結果を意思決定に利用する場合に,特に手法やデータに伴う限界及び不確実さを十分に認識し,利用目的に応じて決定論的な解析や専門家判断などPRA以外の参考情報と適切に組合せて判断することが重要であることを踏まえて,こうした判断に必要なPRA実施過程での前提条件や不確実さの情報が明示されるべきことにも留意しました。
・原子力発電所の停止状態を対象とした確率的リスク評価に関する実施基準(レベル1PRA編):2019
原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的リスク評価に関する実施基準(レベル1 PRA編):2019は,一般社団法人 日本原子力学会標準委員会のリスク専門部会に設けられているレベル1PRA分科会において検討し,リスク専門部会及び標準委員会での審議を経て策定・発行したものです。この標準は,原子力発電所の停止状態における内的事象に関する安全性を総合的に評価することを目的に実施する確率論的リスク評価(PRA)のうち,炉心損傷又は燃料損傷の発生頻度までを評価するレベル1のPRAを実施する場合の要件及びそれを満たす具体的な方法を実施基準として規定したものです。
原子力施設のPRAの対象とする領域は,対象施設,その運転状態,想定すべき事象の範囲,評価する指標の範囲等に応じて多岐にわたります。原子力発電所を対象とする場合には,一般的に,運転状態については,出力運転時と停止時を区別してPRAを分類し,想定すべき事象については,その発端となる事象の特性に応じて,発電システムの内部で起きるランダムな故障や人的過誤を対象とする内的事象のPRAと地震や火災等を対象とする外的事象のPRAに大別されます。また,これを評価する指標の範囲については,炉心損傷又は燃料損傷の発生頻度までを評価するレベル1 PRA,これに加えて格納容器破損の発生頻度及びその場合の放射性物質の環境への放出の量やタイミング等(ソースターム)までの評価を行うレベル2 PRA,さらに,公衆や環境への影響の発生頻度と大きさまでを評価するレベル3 PRAに分類されます。このように評価範囲が多岐にわたることから,当学会におけるPRAの実施に関する標準の整備は国内での活用のニーズやPRA技術の整備状況を考慮して,段階的に進められています。
本標準は,“原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施手順(レベル1 PSA編):2010”が発行後5年経過したことから改定するものです。この間には,福島第一原子力発電所の事故があり,事故の経験と反省に基づく技術的検討を行いました。また,ASME/ANSから低出力/停止時PRA標準の試行版が示されるなど,前回の標準制定後に蓄積された新知見及び評価経験等と合わせて,出力運転時レベル1 PRAの実施基準である“原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的リスク評価に関する実施基準(レベル1 PRA編):2013”の策定における議論を踏まえ,改定しています。
さらに,PRAの結果を意思決定に利用する場合に,特に手法やデータに伴う限界及び不確実さを十分に認識し,利用目的に応じて決定論的な解析や専門家判断などPRA以外の参考情報と適切に組合せて判断することが重要であることを踏まえて,こうした判断に必要なPRA実施過程での前提条件や不確実さの情報が明示されるべきことにも留意しました。
<廃止理由>
今般,以下の理由から,当該標準を廃止することとします。
・標準委員会リスク専門部会では,意思決定に適用できるリスク情報を得るための確率論的リスク評価及びそのための標準のあり方について検討し,従来の実施基準としてではなく,確率論的リスク評価が備えるべき性能に着目し,性能要求(What to do)と仕様要求(How to do)とを区分した標準構成にするべきとの方針を示しています。
・これを反映して内的事象レベル1PRAにかかる標準を階層化し,仕様要求を規定する「基準」1)と性能要求を規定する「指針」2)を新たに発行し,標準構成を再整理しています。
・両廃止対象標準の内容については,発行済みの「基準」「指針」に継承されています。
・発行後の講習会などを通して,新たな「基準」「指針」の周知を図ってきており,講習参加者からは,総じて「基準」「指針」の階層構成について良好な反応を得ています。
・2024年9月原子力学会秋の大会において,標準委員会セッションとして「リスク関連規格の階層化と基準,指針,技術レポートの活用について」を開催し,階層化された標準の今後の活用のあり方などを議論,標準の階層化についての理解が進展しています。
1) AESJ-SC-RK010:2022 原子力発電所の内的事象を起因とした確率論的リスク評価に関する基準(レベル1PRA編):2022
2) AESJ-SC-RK011:2022 原子力発電所の内的事象を起因とした確率論的リスク評価に関する指針(レベル1PRA編):2022
お問合せ先,ご意見提出先
一般社団法人 日本原子力学会 事務局 標準委員会担当
所在地:〒105-0004東京都港区新橋2-3-7 新橋第二中ビル3F
E-mail:sc[a]aesj.or.jp ←[a]を@に置き換えてください
Tel:03-3508-1263
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