一般社団法人 日本原子力学会 Atomic Energy Society of Japan

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【意見公告】146. 原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び維持向上に関する実施基準:20XX

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概要

原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び維持向上に関する実施基準:20XX は,日本原子力学会が標準委員会・システム安全専門部会の下にシビアアクシデントマネジメント分科会を設けて検討し,システム安全専門部会,標準委員会での審議を経て策定したものです。既存の軽水型原子力発電所を対象に,アクシデントマネジメントの整備及び維持向上の考え方,設備の改造又は追加,並びに手順書作成などに関する技術要件とそれを満たす方法を規定している標準です。

2011年311日に発生した東日本大震災では,マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震に伴う設計基準を超える津波によって,福島第一原子力発電所の原子炉の冷却が安定的にできなくなり,1号機から3号機においてシビアアクシデントが発生しました(以下,福島第一原子力発電所事故という。)。そして,134号機の原子炉建屋において水素爆発が誘発されました。このような原子力発電所の事故による放射性物質が大量に環境中へ放出される災害が発生したことから,原子力発電に対する国民の信頼が大きく損なわれる結果となりました。東日本大震災以前の事象を踏まえて内的事象に対するアクシデントマネジメントは全原子力発電所で実運用されており,東日本大震災時にはその一部を使って安定状態に移行させる努力がなされましたが,津波という外部ハザード(自然外部事象)による共通原因故障に対する備えは不十分であったと言わざるを得ません。これは,政府の事故調査・検証委員会の報告書など多くの報告書において指摘されているところでもあります。一方,福島第二原子力発電所も津波によって設計を超える状況になりましたが,アクシデントマネジメントが役に立ち,安全に停止し安定に冷却を維持することができました。

原子力安全の確保は,設計基準を超える事象を,その発生頻度が低いという理由で軽視することなく,考えられる全ての起因事象(重畳した故障の発生を含む)を対象に,深層防護における各防護レベルの対策をリスク評価に基づいて構築することが重要です。例えば一定頻度で発生する事象については設計基準の要件に基づき厳格な品質保証で対処します。発生頻度は低いが影響が大きい事象(低頻度・高影響事象)については,設計基準を超える事象に対する要件に基づいて適切な品質保証で対応すること,すなわちグレーデッドアプローチの考え方に基づき安全性の重要度に応じた適切な対策を実施することによって,整合性,一貫性がある統合された安全対策を構築していくことが重要です。また,いくら考えても人間の考えの及ばない事象の発生は避けられないため,このような事象の発生状況に対しても事象の拡大を防ぐための方策をあらかじめ考えておくことが必要です。

原子力学会の標準委員会では,従来から,シビアアクシデントに関するリスク情報活用のための考え方,原子力施設におけるPRA(確率論的リスク評価)の手法及びリスク情報を活用した統合的意思決定などに関する標準の整備を行ってきています。現在までに,PRA の品質確保,評価用のパラメータ推定,内的事象のレベル123PRA手法,停止時レベル1PRA,内部ハザードとしての内部溢水,内部火災のPRA手法,外部ハザードとしての地震,津波のPRA手法に関する学会標準などを制定し,一部は最新知見を反映して改定作業を行っております。このように,内的事象及び外的事象を含めた全事象に起因するリスクを把握できる手法,更にはリスク情報を活用した統合的な意思決定プロセスに関する標準が整備されています。

また,原子力規制委員会及び関連する学協会においても,シビアアクシデント対策に関する議論が進んできています。ハードウェア対策だけでなく,発電所内外の要員の対応能力の向上を目的とした教育・訓練,手順書の整備などのソフトウェアの対策も重視することで,低頻度・高影響事象も含めたシビアアクシデントの種々のシナリオに科学的,合理的に対応させ,機能的かつ弾力的に安全性を担保することが求められてきました。

以上の状況を踏まえて,原子力発電所を取り巻く内的事象及び外的事象を含めた全事象に起因するリスクを適切に評価,把握したうえで,シビアアクシデントに関するリスクを合理的に達成可能な限り低減することを目的として,“原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び維持向上に関する実施基準:2013”を早急に制定しました。この標準では,シビアアクシデントに至る可能性をできるだけ小さくし,また,シビアアクシデントに至った場合でもその影響を緩和するための措置としてアクシデントマネジメントの整備及び維持向上の考え方,設備改造又は追加,手順書作成などに関する技術要件及びそれを満たす方法を纏めております。

なお,原子力規制委員会においては規制基準が定められましたが,アクシデントマネジメントの整備及び維持向上に関してこの標準は規制基準の考え方を包絡しているものと考えられ,既設プラント毎の特徴を評価することでより安全な運転に資することが重要との考え方を提示したものであります。

2019年には,標準発行後の規制基準への適合性検討を含む最新知見を反映して技術要件を具体化するとともに,継続的な自主的安全性向上活動への適用も考慮して,“原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び維持向上に関する実施基準:2019”を発行しました。

その後,最新知見(アクシデントマネジメント方策例の追加及びIRIDM標準を引用し意思決定における統合的判断のプロセスの明確化等)の反映及び適用範囲(閉じ込め機能が低下したフェーズにおけるアクシデントマネジメントの優先度等を検討する際の具体的な指標)等を継続的に検討してきました。今回,それらの検討結果を踏まえた, “原子力発電所におけるシビアアクシデントマネジメントの整備及び維持向上に関する実施基準:20XX”を発行するものです。

アクシデントマネジメント整備に関しての重要な考え方は,深層防護の考え方に基づき,従来の設計基準事故に基づく設計対応とは別の独立的効果を持つマネジメント能力の維持向上によって防御することです。設計を超える事態に陥ったとき,更には,あらかじめアクシデントマネジメントで考慮していた状況を超える事態に陥った場合に,事故の影響を緩和し,放射性物質の放出を抑制するためのマネジメントを実施できる能力を保持できていることが重要です。アクシデントマネジメントのためのハードウェアの整備は,マネジメント能力の維持向上のための対策の一部であり,そこばかりに集中しては事故の防止と緩和が十分に出来ないことを肝に銘ずることが必要です。シビアアクシデントに至るような状況においては,自動的に起動するシステムはほとんどありません。現場での判断,応用力によって適切な対応を人が実施することになります。もちろん,従来のアクシデントマネジメントと同様なアプローチも重要ですが,それだけでは明らかに不十分です。この標準では,マネジメント能力の維持向上を図ることを主目的に,そのための手段としてのPRA 活用,ハードウェア整備のほか,対応能力を持った人材が発電所に常駐していることや,教育と訓練を含めた必要な能力の継続的な確認を要求しています。加えて,低頻度・高影響事象も含めたシビアアクシデントの種々のシナリオや,シナリオの同定が難しい状況に弾力的に対応できる訓練の充実なども求めています。包括的には,アクシデントマネジメントの整備及び維持向上のために,実施内容が容易に理解できるよう,検討の各ステップにおいて,追跡可能な詳細さで文書化を行うと同時に,適切な品質保証のもとで実施することを求めています。このように,ハードウェア,ソフトウェアの両面からの対策を要求しています。

既設プラントにおけるアクシデントマネジメントを整備する上で,意図したシナリオにおけるリスクの低減を目的とした新規の系統・設備の追設などは,それらの系統・設備を起因としたリスクの発生があること,すなわち,プラント全体のリスクを増大させる可能性も併せて考慮しておくことに留意する必要があります。更に,各原子力発電所の機器・系統の構成はそれぞれに異なることから,整備を検討するハードウェア,ソフトウェアのリスク低減の有効性は,当然,発電所毎に異なります。そのため,アクシデントマネジメントの整備は,各発電所に固有な総合的なリスク低減の視点から判断して策定すべきものであることにも留意しておく必要があります。この標準に纏めている考え方と要求事項を活用することで,原子力発電所の総合的なリスクが継続的に低減していくものと考えております。

お問合せ先,ご意見提出先

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Tel:03-3508-1263 

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標準案の閲覧

標準原案(SC-PUB146 PDF・6.36MB)