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【意見公告】135. 原子力発電所の安全性向上のための定期的な評価に関する実施基準:202X

ご意見の受付

受付期間 : 2023年12月07日 〜 2024年01月12日ご意見の受付は終了しました。

ご意見と対応

1名の方からご意見をいただきました。
ご意見・回答(No.135) 

概要

我が国では,既設の原子力発電所の安全性向上を目的とした約10 年ごとの中長期的かつ定期的なレビューが,1994 年以降,規制制度上の位置づけを変えながら,実施されてきました。現行の規制基準下で稼働しているプラントにおいて,この定期的なレビューは,安全性向上評価届出制度の一部である中長期的な評価に位置付けられています。また,高経年化技術評価,及び運転期間の延長とも密接な関係にあります。定期的なレビューは,長期停止中のプラント及び廃止措置段階のプラントにおいても重要であり,一部は規制要件化されています。

 30 年間にわたる定期的なレビューのプラクティスの中で,“大きな労力をかけて評価を行っているにも関わらず,実質的に安全性を向上させる対策が抽出されていない”という問題が繰り返し指摘されてきました。特に,東京電力福島第一原子力発電所事故の調査は,津波対策が定期安全レビューの機会に適切に改善されていなかったことを,厳しく指摘しています。とはいえ,評価の当事者にとって,プラントの安全性を証明したいという心理を完全に消し去ることは難しいことです。従って,継続的な安全性向上のためには,規制制度を踏まえて定期的に安全性を評価するだけでなく,総合的な評価を踏まえて安全性向上策を提案する方法を丁寧に規定し,それを実行することが重要であると考えられました。

そこで,日本原子力学会標準委員会は,事故前の規制制度を踏まえた“原子力発電所の定期安全レビュー実施基準:2009”に代わる標準として,2015 年に“原子力発電所の安全性向上のための定期的な評価に関する指針:2015”(以下,“PSR+指針”という。)”を発行しました。この標準は,国際原子力機関が2013 年に発刊したSSG-25IAEA Safety Standards Periodic Safety Review for NuclearPower Plants)を土台として,国内外の良好事例及び慣習を踏まえて議論を重ねた成果です。また,2020 年には関連する技術レポートとして““原子力発電所の安全性向上のための定期的な評価に関する指針:2015”のより良い理解のために”も発刊しました。これらの図書では,“実施できたことをレビューするのではなく,必要な対策を指摘する”という姿勢を定着させることを念頭に,原子力発電所におけるPSR+の実施に関する基本的考え方並びに評価の視点及び実施方法を規定し,さらに多くの推奨事項を記載しています。

 今回の標準改定は,2015 年発行のPSR+指針の定期改定に当たるものですが,この検討過程において,主に次の事項に対応しました。

現行規制制度の下で稼働しているプラントにおける中長期的な評価の経験に基づいて,PSR+指針の規定事項と推奨事項を見直しました。実態にそぐわないものは見出されなかったものの,要求,推奨,例示等の位置づけが分かりにくい記載があり,項目を再整理して,何を,どのように実施するかを明確にしました。

また,一つの発電所に複数の号機をもつ場合の要求事項と推奨事項を明確化しました。安全性向上評価届出制度はPSR+指針の重要な活用先となり得る制度ですが,そこでは多大な労力を掛けてプラント毎かつ運転サイクル毎の評価が実施されています。その経験を踏まえ,号機毎に評価することが適切な安全因子と,発電所単位で評価する方が適切な安全因子とを整理し,基本となる要求事項を規定しました。

規制制度の変更の見通し及び海外の動向も念頭におきました。

原子力規制委員会は2023 2 月に“高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要”を決定し,制度の詳細設計を進めています。並行して,原子炉安全専門審査会及び核燃料安全専門審査会に対しても,安全性向上評価の制度のあり方及び運用の見直しについて助言を依頼しています。既設炉を安全に長期間利用するために,特にオブソレッセンスに備えるうえで,PSR+は有効なものとなります。規制制度の変化は標準の使用者にも大きな影響を与えますが,今後の制度の詳細には不確定な要素がありますから,中長期的な評価と安全性向上策の抽出に必要な標準的プロセスを明確にすると共に,特定の制度にだけ当てはまるような要求事項がないことを確認しました。

海外には,定期安全レビューの仕組みを使って安全性を高めながら,既設炉を有効に活用している国が多くあります。スイスでは,定期安全レビューを経て,初期のプラントに対する安全系統の追設を含む,大規模な改造に踏み切りました。フランスは,標準的なレビュー方法と安全対策を丁寧に議論した上で,2019 年以降,32 基の900MWe 級加圧水型軽水炉の長期運転を進めています。カナダでも,定期安全レビューを基盤の一つに据えて,カナダ型重水炉の大規模改造工事を順に進めていく計画です。これらのプラクティスの内容を確認したうえで,この標準がそのようなプラクティスにも対応し得るものであることを確認しました。

 “原子力発電所の安全性向上のための定期的な評価に関する実施基準:202X”は,一般社団法人日本原子力学会が標準委員会システム安全専門部会の下に統合的安全性向上分科会を設けて検討し,システム安全専門部会及び標準委員会での審議を経て,PSR+指針に代わる新しい標準として,策定・発行したものです。この改定標準においても,Proactive Safety ReviewPSR+)で表す“事前に率先して安全性向上措置を抽出する”というPSR+指針の理念を踏襲したうえで,前述のプラクティスを織り込んで,実施基準化を行いました。

 この標準を適用することにより,中長期な視点で,予見性をもって,かつ合理的に安全性向上のための措置を考え出すことができ,プラントの継続的な安全性向上を図ることが可能になります。プラントのライフサイクルに応じて適切な規制制度に当てはめ,積極的に活用されることを期待しています。



お問合せ先,ご意見提出先

一般社団法人 日本原子力学会 事務局 標準委員会担当
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E-mail:sc[a]aesj.or.jp  ←[a]を@に置き換えてください
Tel:03-3508-1263  Fax:03-3581-6128

提出方法及び留意事項 ・提出方法
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なお,冒頭に氏名,連絡先(住所,電話番号,FAX番号又は電子メールアドレス)及び所属(会社名,団体名等)を必ず明記していただくとともに,ご意見が原案のどの箇所に対応するかを明らかにして下さいますよう,お願い申し上げます。
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