原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル1PSA編):2010(P001:2010) (1108)

1108
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内容紹介

原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル1PSA編):2010は,一般社団法人日本原子力学会が標準委員会発電炉専門部会の下に停止時PSA分科会を設けて検討し,標準委員会の組織変更に伴い,リスク専門部会及び標準委員会での審議を経て策定・発行したものです。この標準は,原子力発電所の停止状態における内的事象に関する安全性を総合的に評価することを目的に実施する確率論的安全評価(PSA)のうち,炉心損傷の発生頻度までを評価するレベル1のPSAを実施する場合の要件及びそれを満たす具体的な方法を実施基準として規定したものです。原子力発電所のPSAは,確率論を用いてその安全性を総合的かつ定量的に評価する手法であり,炉心又は燃料の損傷に係る事象に着目して,損傷に至る事故シナリオ及び損傷後の事故進展を定量化することによって,発生頻度と影響を推定することができます。PSAの特徴は,原子力発電所の安全性にかかわる評価を現実的な仮定の基に論理的かつ包括的に行うことができること,安全性に影響を与える要因について定量的な考察が可能であること,及び原子力発電所やその構成設備に関する特性ならびに現象論に関する知識・データの不確実さとそれらによりもたらされる評価結果の不確実さを明示することができることなどにあります。1975年に米国で公表された“原子炉安全研究(WASH-1400)”を出発点として,この四半世紀の間に各国でPSAの技術開発,事例適用,及び応用研究が進められてきた結果,今日では,PSAは安全規制を含む安全設計・運転管理等の広い分野における意思決定プロセスを支援する効果的な手段と認識されるようになってきています。我が国ではこれまで,アクシデントマネジメントの有効性検討や定期安全レビューにおける原子力発電所の安全性の定量的な評価への適用が行われていますが,さらにPSAによって得られるリスク情報を活用した安全規制の導入に向けての基本的な考え方が原子力安全委員会及び規制行政庁において示され,それに沿って“原子力発電所の安全規制における『リスク情報』活用の基本ガイドライン(試行版)”が策定されています。また,リスク情報の活用に関連して,リスク指標の観点から原子力安全委員会において安全目標案,及びそれに対応する性能目標が示されるとともに,PSAの品質や透明性の確保の観点から規制行政庁において“原子力発電所における確率論的安全評価(PSA)の品質ガイドライン(試行版)”が策定されています。一般社団法人日本原子力学会標準委員会では,リスク情報の活用やPSAの品質確保の観点から,その活動の一環としてリスク情報の活用に関する標準とPSAの実施に関する標準の整備を行っています。リスク情報の活用については“原子力発電所の安全確保活動へのリスク情報活用に関する実施基準”の策定活動を進めています。原子力施設のPSAの対象とする領域は,対象施設,その運転状態,想定すべき事象の範囲,評価する指標の範囲等に応じて多岐にわたります。原子力発電所を対象とする場合には,一般的に,運転状態については,出力運転時と停止時を区別してPSAを分類し,想定すべき事象については,その発端となる事象の特性に応じて,発電システムの内部で起きるランダムな故障や人的過誤を対象とする内的事象のPSAと地震や火災等を対象とする外的事象のPSAに大別されます。また,これを評価する指標の範囲については,炉心損傷の発生頻度までを評価するレベル1PSA,これに加えて格納容器破損の発生頻度及びその際の放射性物質の環境への放出の量やタイミング等(ソースターム)までの評価を行うレベル2PSA,さらに,公衆や環境への影響の発生頻度と大きさまでを評価するレベル3PSAに分類されます。このように評価範囲が多岐にわたることから,当学会におけるPSAの実施に関する標準の整備は国内での活用のニーズやPSA技術の整備状況を考慮して,段階的に進められており,2002年に“原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価手順:2002”が発行された後,2007年に“原子力発電所の地震を起因とした確率論的安全評価実施基準:2007”,2009年に“原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル1PSA編):2008”,“原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル2PSA編):2008”,及び“原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル3PSA編):2008”が発行されるとともに,PSAに必要とされる信頼性データの収集とパラメータ推定を行うための標準である“原子力発電所の確率論的安全評価用のパラメータ推定に関する実施基準”の策定活動を進めております。本標準は,“原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価手順:2002”が発行後5年経過したことから改定するものであり,この発行以降,国内において実施されてきた停止時PSAでの実績やその後の新しい技術的知見,及び“原子力発電所における確率論的安全評価(PSA)の品質ガイドライン(試行版)”の性能要求を受けて策定された出力運転時レベル1PSAの実施基準である“原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル1PSA編):2008”の策定における議論を踏まえ,改定を行いました。同標準の改定に当たっては,PSA技術の向上を反映させるとともに,品質や透明性の確保がより適切に行われるよう,要求事項の見直しを行いました。さらに,“原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準(レベル1PSA編):2008”と同様に,PSAの結果を意思決定に利用する場合に,特に手法やデータに伴う限界及び不確実さを十分に認識し,利用目的に応じて決定論的な解析や専門家判断などPSA以外の参考情報と適切に組合せて判断することが重要であることを踏まえて,こうした判断に必要なPSA実施過程での前提条件や不確実さの情報が明示されるべきことにも留意しました。

登録情報

  • 発行年 : 2011
  • 版型頁数 : A4/158
  • 重量(g) : 440
  • ISBN : 978-4-89047-343-4
  • 担当部会 : 停止時PSA分科会